※この記事はネタバレありとなります。作品を読み終わっている方、またはネタバレを気にしないという方のみお読みください。
発売前から衝撃的なあらすじでかなり話題になっていましたが、読んでみた結果期待していた通りの重苦しさと、それと同時に主役二人の恋愛の明るさが感じられそのコントラストに魅せられました。読める人は選ぶと思いますが僕は心から面白いと感じました!
【概要】
ガガガ文庫より8月18日に発売。
著者は中西鼎先生。
イラスト担当はしおん先生
【あらすじ】
四方を山に囲まれた田舎町、阿加田町。
この町の高校に通う中川栞は、いじめを受けて不登校になっていた。
ある日、栞の家に同居人として佐藤冥がやって来る。
誰にも心を開かない冥は、この町へ来た目的を栞だけに告げた。
「姉を死に追いやった七人の人間を皆殺しにしてやりたいの」
三年前、冥の姉・明里は、この町で凄惨ないじめに遭い自ら命を絶っていた。
その復讐のために、冥はここへ戻ってきたのだ。
冥は阿加田神社に伝わる血塗られた祭儀『オカカシツツミ』を行い、巨大な蛇の神『オカカシサマ』を自らの身に宿らせることで、七人の人間を殺していく計画を立てていた。
夏至の夜、冥は儀式を成功させる。
それから冥は神様の力を借りて、栞と共に姉の死に関わった人間を殺していく。
復讐と逃避行の日々の中、いつしか二人は互いに恋愛感情を持つようになる。
だが冥は栞に、一つの隠し事をしていた。それは『オカカシツツミ』を行った人間は、最後には自らの魂を神様に捧げなければならない、つまりは〈冥の死〉が避けられないことを。
今一番キテる作家が送る、残酷青春ラブロマンス!!
【キャラクターについて】
冥と栞、どちらも殺人という最大の禁忌を犯していること、自分たちに優しくなかった人々を憎んでいること以外はとても善良で、ありがとうを素直に言えて、気遣いができて、大切な人のために覚悟をもって行動できる。そんな姿がしっかりと描かれていたので二人に対する好感度は読んでてとても高かったです。だからこそ最期まで面白いと思いながら読み進められました。特に3回目の殺人での栞の行動と冥にかけた言葉、そして終盤の栞のどんなに苦しくても愛しい人を追い続ける姿は本当に格好良かったです!冥の愛情表現の可愛さにも心撃ち抜かれました!
冥は悲観的、明里は楽観的で、死んでしまったとは明里で、生きたのは冥。名前も性格も境遇も姉妹で正反対にした演出は巧いと感じました。
復讐対象である人々は徹底的に悪として性根が醜く描かれ、その死に際も欲や願いが満たされることはなく悲惨に命を散らしていく様はある種の爽快感がありましたね。
【展開について】
物語の大筋は殺人と逃避行と恋。その合間に姉妹の現在までの生き様が語られる形で構成された形で描かれていました。
明里のいじめと自殺までの経緯とその心の内や殺人など、悲惨で陰鬱な場面はとことん克明に残酷に。
冥と栞の会話劇や愛し合いや逃避行という名の冒険など、楽しく光に満ちた場面は優しくて明るくて。
その二つのコントラストがこの物語の特別な美しさを引き立てていたと思います。
冥と栞がやったことは倫理的観点からすれば悪であることは間違いないけれど、この因果応報と二人の恋と幸せを、僕は肯定してあげたいです。
【推しポイント】
冥と栞のキャラ造形と相性の良さ!この二人が主役だったからこの作品にここまでの面白さと美しさが生まれていたのだと思います。