ラノベ感想&紹介便

本と人の、出会いの一助に

【2023年下半期のお気に入り新作ラノベ10選紹介】

今年の下半期の新作は個人的にかなりの激戦状態で、10作品選出するのにかなり苦労しました。そんな沢山の良作秀作達のなかから選び抜かれた物語をこれから紹介していきます。

 

 

1.かくて謀反の冬は去り

古代と近代が融合した独特な世界観を舞台に、王の突然の死による後継問題に揺れる宮廷で繰り広げられるスペクタクル陰謀劇。

この物語は人物紹介を兼ねた物騒な日常の前半と生き残るための策謀劇の後半という2部構成で、最初から最後まで楽しさと怖さと緊張感がない交ぜな独特な空気感が漂っています。そして説得力のある結末へのもっていき方が大変素晴らしく気持ち良い!

ハンデを抱えながらも、油断ならない恐ろしさと優しさ持ち合わせ、意思と知恵の強さと弁の巧みさで自分の有利に状況を塗り替える活躍を見せる主人公、奇智彦尊殿下がまず最高に魅力的。そして他にも荒々しくと気品ある熊の巫女や忠誠深い護衛と側仕え、無邪気で幼い王女様など様々な個性を持ったキャラクターが集まっており、そこから紡がれるドラマにきっと誰もが夢中になれます。

 

2.悪役聖女のやり直し ~冤罪で処刑された聖女は推しの英雄を救うために我慢をやめます~

魔族と人間が争いを続け、教会が絶大な力を持つ世界の、聖女追放もので、推し活もので、愛の物語。

推し活コメディは明るく楽しく。復讐のカタルシスはすっきりと。そして一度目の人生ではできなかった、やろうともしなかった数々の問題解決を経て大切だと思える者が増えて。深い絆を結び尊い愛を抱いたローズが、全てを捧げて推しを救う道を歩みながら彼女自身も救われてゆく運命改変のロマンスに心奪われました!

『最後に愛は勝つ』を体現した結末のの美しさと力強さに感動!紛れもない神作品です!

 

3.さようなら、私たちに優しくなかった、すべての人々

姉を死に追いやった人達を神様の力で殺していくヒロイン冥と、その手伝いをする主人公栞を中心に繰り広げられる残酷青春ラブロマンス。

姉が受けたいじめと自殺までの経緯、その心の内や殺人など悲惨で陰鬱な場面はとことん克明に残酷に。冥と栞の会話劇や愛し合いや逃避行という名の冒険など、楽しく光に満ちた場面は優しくて明るくて。そんなコントラストがこの物語の特別な美しさを引き立てていました。

冥も栞も憎しみのもと殺人という最大の禁忌を犯していることを除けばとても善良で、だからこそ二人の幸せを心から願えるし、恋をして共依存になっていく姿にはきっとプラスの感情を覚えることができるはず。

そしてこの物語の結末をハッピーエンドと捉えるかバッドエンドと捉えるかは読む人次第。ぜひその目で確かめてみてほしいです。

 

4.見た目は地雷系の世話焼き女子高生を甘やかしたら?

常識を逸したお世話欲を持つヒロイン甘音が、主人公の景に手伝ってもらいながら他人に甘えられるように努力するドタバタ日常ラブコメ

というのは前半までのお話。そこも勿論凄く楽しくて面白いのですが、後半から表面化していくこの物語の本質は『地雷系』『まともじゃない』『共依存』です。とにかく甘音が色んな意味で強すぎる!まともじゃないからこその行動、言葉がもたらした救いと生まれる特別な関係に、きっと大興奮間違いなし!

 

5.二番目な僕と一番の彼女

同姓同名のイケメンの陰で同級生から“二番”と呼ばれている主人公、佐藤一とクラスで絶大な人気を誇る美少女、南野千夏の間に捨て猫をきっかけに縁ができ、二人で同じ時を過ごして触れ合い、惹かれ合い、救い合い、愛し合う、これはそんな美しい物語。

誰にも言えない心の傷をさらけ出し、寄り添って、癒し包み込む。それをお互いにできるふたりの優しくて温かな関係がとても尊かったです!

一のすごく頼りになる沢山のカッコイイところや、千夏が一にだけ見せる沢山の可愛い『かお』も素敵でしたし、そして何より完全無欠にお似合いすぎるふたりが、いざってときに相手のためを想った行動を起こすシーンひとつひとつが心にグッとくる!

 

6.俺の背徳メシをおねだりせずにいられない、お隣のトップアイドルさま

過度な食事制限をする優月が心配でちゃんとした食事を与えたい主人公鈴文の「メシ堕ちさせたい」という願いと、それは余計なお世話だから止めさせたいヒロイン優月の「ファンにオトしたい」という願いぶつかりあう、お隣さん同士のハートと胃袋を賭けた戦いの物語。

お互いに自分を武器を使って誘惑し合いながら交流を深め、互いのことを知って距離を縮めていく過程は最高の青春であり同時に読者を食欲の沼に叩き込む飯テロでもあり、新感覚の楽しさを味わえます。

優月がどれだけ耐えようとしても鈴文の作る様々な誘惑料理には抗えず饒舌に情緒豊かに食レポしながら堪能する様が最高に面白可愛くて。おせっかいに込められた思いやりや気遣いが土台にある、アイドルとしての優月のことを尊敬しながら素の優月のことを心から大切に想う鈴文の言動全てが素敵で。

そして終盤の鈴文が行った究極のおせっかいで僕は感動のあまり泣きました。

 

7.オリヴィア嬢は愛されると死ぬ ~ 旦那様、ちょっとこっち見すぎですわ ~

愛する家族の生活を守るためのお金を手に入れる手段として娼館に入ろうとしたオリヴィアが、『主人が愛した女が死ぬ鈍い』がかけられた屋敷で、お金の引き換えに愛されて死ぬために迎えられ始まる、愛の駆け引きの物語。

出会いから呪いが実るとされる日まで、季節の移り変わりとともに悲しさを裏に隠しながらも楽しく幸せに交流を重ねるヒロインオリヴィアとヒーロークラースと屋敷の人々の日常、そしてそこに愛と絆が育まれてゆく様は温かさと切なさを内包していました。強く優しく美しいオリヴィアと紳士的で純朴で可愛らしいクラースの間に生まれる深く尊くかけがえのない愛が素晴らしい。

ここには様々な形の『愛』があり、時には悲痛にも憎しみにも罪悪感にもなり、けれど人生にはなくてはならないもので笑顔と喜びと幸せを運んでくれるものとして描かれていて、僕はこの作品の『愛』の解釈、表現に心から拍手喝采を捧げます。

 

8.いつもは真面目な委員長だけどキミの彼女になれるかな?

夜の繁華街でアルバイトをしている主人公が、ギャルの姿をしているクラス委員長のヒロインを助けたことで素を見せ合える秘密の友達関係になり進む物語。

主人公の陽都は母親の不安からの過干渉に、ヒロインの紗良は母親の信頼からの重圧に、と各々苦しんでいて自分らしくいられる場所を繁華街に求め。そんなある種共通点を持つ二人の交わす言葉、想いがとても尊くて素敵。そして二人が楽しいや嬉しいを共有し積み重ねていく時間にはキラキラが満ちていました!

紗良の努力と本心を理解し寄り添い『穢して』救う陽都がイケメンすぎて、紗良が陽都だけに見せる笑い顔も拗ね顔も泣き顔も全てが可愛くて、両想いになっていく心情表現も最高!

 

9.魔法使いの引っ越し屋 勇者の隠居・龍の旅立ち・魔法図書館の移転、どんな依頼でもお任せください

優しさと温かさが満ち、魔法に彩られた引っ越しヒューマンドラマ。

天才魔法使い少女が引っ越し屋として依頼者に寄り添い、ただ物を運ぶだけではなくその旅立ちが素敵なものになるようにと行動する姿と、紡ぐ言葉に宿る思いやりがとても素敵。

連作短編形式で様々な事情を抱えた者達の引っ越しが描かれ、そのどれにも別れの悲しさとそれを包み込む希望があり、読んでいてとても幸せな気持ちになりました。特に魔法図書館の移転において描かれた妻から夫への愛が僕には刺さりすぎてやばかったです!

 

10.引きこもりVTuberは伝えたい

主人公は引きこもり少女のVTuber、真宵アリスこと結家詠。幼少期から数々の事件に巻き込まれトラウマを植え付けられ、しまいにはどん底まで落ちてしまった彼女がVTuberを始めたのは、自らが被ったネット冤罪に立ち向かうため。そんなともすればシリアス一辺倒になりそうな最初期の行動原理ですがしかしこの物語はVTuber配信コメディで、沢山の笑いと感動に満ちていました!

デビュー配信の時点で既に最上級のインパクトと共に可愛さ面白さ楽しさが天元突破し、結果衝撃と共に温かく迎え入れられる描写は最高しかない。そしてその果てにいろんなものからもう逃げないと決めて悲劇を喜劇に変えると宣言し、弱気を蹴っ飛ばした彼女の軽妙で見る者聴く者(リスナー)読む者(読者)の目と思考と心を釘付けにする、衝撃的な挿絵と共に展開された劇場型過去エピソード語り配信描写は間違いなくここにしかない味と魅力を感じさせてくれます!

アリスの持つ特技が様々な人の心に影響を与えている表現も素敵です!