ラノベ感想&紹介便

本と人の、出会いの一助に

【新作ラノベ感想】レプリカだって、恋をする。

 

 

【概要】

電撃文庫より2023年2月10日に発売

第29回電撃小説大賞《大賞》受賞作品

作者は榛名丼先生

イラストレーターはraemz先生

 

【あらすじ】

具合が悪い日、面倒な日直の仕事がある日、定期テストの日……。彼女が学校に行くのが億劫な日に、私は呼び出される。

 愛川素直という少女の分身体、便利な身代わり、それが私。姿形は全く同じでも、性格はちょっと違うんだけど。

 自由に出歩くことはできない、明日の予定だって立てられない、オリジナルのために働くのが使命のレプリカ。

 だったはずなのに、恋をしてしまったんだ。

 好きになった彼に私のことを見分けてもらうために、髪型をハーフアップにした。

 学校をさぼって、内緒で二人きりの遠足をした。そして、明日も、明後日も、その先も会う約束をした。

 名前も、体も、ぜんぶ借り物で、空っぽだったはずの私だけど――この恋心は、私だけのもの。

 海沿いの街で巻き起こる、とっても純粋で、ちょっぴり不思議な“はじめて”の青春ラブストーリー。*1

 

【キャラクターについて】

主人公はどこにでもいう普通の女の子から生まれて、オリジナルのためにという使命感で日々を過ごしてきた分身体(レプリカ)のナオ。そんな彼女が一人の少年と出会ったことで、沢山の初めてを知って経験して自分だけの『楽しい』を積み重ねていく様子がとても可愛くて愛しくて。けれど自分の異質さや儚さを自覚し夢から醒めるように暗いところへ向かっていく様は見ていて辛くて切なくて。そういう繊細で美しい人物表現に魅せられました。

ナオが変わるきっかけとなった少年の優しさと格好良さと想いの見せ方も最高です!

 

【展開について】

少年少女の初々しい恋と眩しい青春模様には癒され、レプリカという存在だからこそ直面する苦悩には心が痛み、最後に待っていた爽やかで幸せな光景に満たされました。

自分の持つもの全てが借り物だと思い、自分の行動は全てオリジナルである素直に捧げてきたナオが、自分だけのものを手に入れて自分自身のために生きられるようになるまで。その過程は様々な悲しみと喜びに溢れ、一つ一つの場面がいろんな感情を呼び起こし心を強く揺さぶる。そんな素敵な読書体験ができる物語です。

 

【推しポイント】

力強くはないけれど、不思議と心に残る美しい文章!

大賞を取るに相応しいものだったなと思います。

 

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bookwalker.jp

*1:BOOK☆WALKERより引用