ラノベ感想&紹介便

本と人の、出会いの一助に

【新作ラノベ感想】 勇者症候群

 

 

【概要】

電撃文庫より2023年2月10日発売

第29回電撃小説大賞《金賞》受賞作

作者は彩月レイ先生 イラストレーターはりいちゅ先生

 

【あらすじ】

勇者、それは世界を救う特別な力。夢の中で「勇者」と称えられた少年少女は、ただ美しき女神の言うがまま魔物を倒していた。

 ――――その魔物が“人間”だとも知らず。

 

 《勇者》、それは世界を滅ぼす特別な力。謎の生物「女神」に寄生された夢見る少年少女は、無意識の怪物と化し破壊と殺戮を尽くす。

 そこに悪意はなく、敵意もない。ただ一方的な正義のみが押し寄せる終わりなき戦い。その均衡は少年・アズマが率いる勇者殲滅の精鋭部隊『カローン』によって保たれていた――。

 《勇者》を人に還す研究をしていた少女・カグヤは、ある日『カローン』への所属を命じられる。だが過去の災厄で全てを失ったアズマたちにとって、カグヤの存在は受け入れ難いもので……。

 

 少年は《勇者》を倒すため。少女は《勇者》を救うため。二人は衝突しながら、ともに戦場へと赴く――!

 第29回電撃小説大賞《金賞》受賞、電撃文庫が贈る出会いと再生の物語。*1

 

【キャラクターについて】

まずこの作品で勇者と呼ばれる存在の設定がかなり重いです。幻想の世界で幸せを謳歌しながら、現実の世界では悪意なく破壊と殺戮を尽くすクリーチャーってあまりにも救いがなさすぎるでしょう!

その勇者を殲滅するための部隊のリーダー、アズマはその戦闘力はけた外れで堅物。そして勇者を救うために研究をしているカグヤもまた別ベクトルで有能で負けん気が強い。そんな正反対の目的を持つ二人なので最初は反発し合っているものの、お互いを理解し合うことで認め合い、失いたくない・守りたい存在にまでなっていく。そういう関係性の表現がとても素敵でした!

他のカローンメンバーも其々に信念を持った魅力的なキャラクターです。

 

【展開について】

この物語の敵としての位置付けである勇者の設定からしてアレなので、しかもそれを少年少女が命懸けで討伐するというのですから実際かなりシリアスです。けれどただただ暗く重いばかりではなくて。少しずつ見えてくる現状打破の糸口、ただ真っ直ぐに救いたいという想い、甘い夢から引き上げる力と言葉。邪悪を決して認めぬ心の強さ。そういう光り輝くものも確かにあって、どこか救われたように感じられました。そして特に、終盤からのカグヤとアズマのVS○○(ネタバレ防止のため)戦は読んでて凄く気持ち良かったです!

 

【推しポイント】

序盤と終盤の対比、そしてタイトル回収!

これは見事という他ない巧さでした。

 

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*1:BOOK☆WALKERより引用